DAY DREAM -Sweet Tears 04-

 互いの存在を腕の中に感じ続けて、どれ程の時間が経ったのか。
 ふと、臨也が身動きする。それに合わせて背に回していた腕を解けば、臨也は顔を伏せたまま離れ、そして立ち上がった。
 それから、顔を巡らせて壁の時計の針の位置を確かめる。
「……もうこんな時間か」
 ぽつりと呟かれた声に、静雄も、そろそろ日没の時刻であることに気付いた。
 ずっと放置されていたプラズマTVの画面の中で、マクロスのアニメはまだ終わっていなかったが、今が何話目であるのかはもう分からない。だが、見始めた時間からすれば、おそらくそろそろディスクも終わりだろうと思われた。
「もう一回くらい、見直すくらいの時間はあるかな」
 そう言い、こちらに目線を向けた臨也の表情は、もういつもの表情を殺した顔だった。
 すっきりと整った目鼻立ちの中で一際印象的な、鋭く透明感のある目が、真っ直ぐに静雄を見つめてくる。
 それにまなざしを返しながら、そうだな、と静雄はうなずいた。
「明日は仕事だけどよ。今日はもう、他に用事があるわけじゃねぇし」
「そう」
 それじゃあ、と数秒の間を置いて。
「御飯くらい、食べていく?」
 臨也が言った。
「……は?」
 思わず、真顔で相手の顔をまじまじと見てしまったのは、多分静雄のせいではないだろう。
 臨也の方もそれを分かっているのか、日本語が分からないのかと馬鹿にすることもなく、小さく肩をすくめて見せた。
「本音を言えば、今すぐ出て行け、って言いたくて仕方ないんだけどね。いくら俺でも、この場でそれを口に出すほど救い難い性格はしてないからさ」
「───…」
 いや十分言ってるだろ、とか、ツッコミたいことは山のようにあった。
 けれど。
「……じゃあ、夕飯食ってから帰るわ」
 ここで、「いいのか」とか、「本気で言ってるのか」とかの駄目押しの言葉を吐いたら、間違いなく臨也は臍を曲げる。
 彼の性格上、こういう物言いが精一杯なのだ。
 そして、それ以上の無理を強いる気もない静雄は、思いつく限り一番穏やかな言い方で応じた。
「分かった」
 すると、臨也もどこか救われたような風情でうなずく。
 おそらく、と静雄は思う。今の誘いかけは、本当に臨也としてはギリギリの言葉で、それを静雄がどう受け止めるか、胸のうちではひどく不安だったのだろう。もしかしたら、静雄の返事を怖がってすらいたかもしれない。
 ───傷付けたりなんかしねぇよ。
 声に出せば、また反発するだろうから、心の中で静雄は呟く。
 想いが通じ合った今でも、相性がいいとは言い難い二人だ。この先、些細なことで喧嘩したり、うっかり傷付け合ってしまうこともあるだろう。
 だが、静雄は自分にできる最大限で、臨也を大切にするつもりだった。
 ───それが、好きだってことだろ。
 誰かを好きになったことは、二十四年の人生で何度かあるが、恋人を作ったことはない。
 それでも、恋愛において、して良いことと悪いことを静雄はきちんとわきまえていた。
 所詮、自分は自分であるから、チャップリン演ずるチャーリーほど、健気(けなげ)にはきっとなれない。それでも、あんな風に好きな相手には精一杯、優しくしたかった。
「じゃあ、どうする? ピザかなんか取ってもいいし、簡単なものなら作ってもいいし……」
「なら、作るぜ?」
 そう言うと、臨也は驚いたように目を丸くする。
「作るって……シズちゃん、料理できるの?」
「当たり前だ。俺が何年、一人暮らししてると思ってやがる」
「──でも、この間は……」
 言いよどんだ臨也に、静雄は、風邪の時のレトルトの粥のことか、と気付く。
「あの時は、俺が作ったもんじゃお前が食わねぇだろうと思ったんだよ。だから、レトルトにしたんだ」
「──ああ、そう」
 タネを明かせば、不承不承納得したように臨也はうなずいた。
「確かにシズちゃんが作ったんだったら、手をつけなかったかもしれないけど……。試してみる価値は、もしかしたらあったかもしれないよ?」
 お互いに。
 そう言い捨てて、臨也はするりと猫が身を翻すかのようにソファーの傍らを離れ、キッチンへと向かう。
 その後を追いながら、どうだろうな、と静雄は考える。
 確かに、手作りの粥を出してやれば、臨也は食べたかもしれない。だが、静雄の方が、臨也がそれを受け入れるという想像ができなかった。
 何事にも巡り合わせというものがある。
 あの時は互いにあれが精一杯だったし、今もこれが精一杯だ。だが、あの時と今は、幾つかの事がはっきりと違っていて、以前は駄目だったことが、今は互いに受け入れられるようになっている。
 それは自然なことであり、その時々によって物事は少しずつ変わってゆくものなのだろう。
 だから、臨也との関係もこのままでは決してない。時間が経てば、もっと上手く優しくしてやれるようになるかもしれないし、臨也は更に意地っ張りになるかもしれない。
 どちらへ転ぶのかは予想などできるものではないが、少しでもいい方向に変わってゆければいい、と思う。
 そんな風に考えながら、冷蔵庫を開けてしゃがみ込んでいる臨也の後ろに立って、静雄も一緒に中を覗き込んでみた。
「……そこそこ、中身は入ってるな」
「一応ね。仕事してる最中なら、うちの秘書が昼御飯くらい作ってくれることもあるし。まあ、彼女場合、自分の食事を作ってるだけで、俺の分はオマケなんだけど」
「秘書っていうと、あの女か。髪の長い。このマンションの前で見かけたことがある」
「そう。波江さん。手強いよー、彼女は」
「あー、そんな感じすんな」
 静雄自身、女を見る目があるとはこれっぽっちも思ってはいないが、気がキツそうか優しそうか、頭が切れそうか否かくらいの見分けはつく。加えて、以前に彼女の姿を見た覚えがあるのだ。
 いつどこで、とまでは思い出せない。だが、多分、池袋の街中でのことだろう。それも、それなりにキナ臭い場面でだ。そういう印象が彼女には残っている。
 臨也がそんな女を秘書にしたのも、どうせロクでもない理由なのだろうな、と静雄は推測する。
 何かの取引をしたか、利害が一致したか。まあ、そんなところだろう。
 そんなことを考えていると、いつの間にか、振り返った臨也が静雄の顔を覗き込んでいて。
「シズちゃん、焼餅?」
 いつもの毒を含んだニヤニヤ笑いで聞かれるから、何なんだこいつは、と思いながらも静雄は自分の胸のうちを探った。
「……何にもねぇっつったら、嘘になるな」
「へえ?」
 正直に答えると、臨也は面白げにまばたきする。
 それを見下ろしながら、静雄は、この頭の中でこいつは何を考えているんだろうな、と思う。
 おそらく、面白がる気分が半分、残り半分は、妙に感情を騒がせているのではないか。臨也の純情っぷりは先程、十分過ぎるほどに分かったから、ウザい質問をされても、面倒だとは思っても腹は立たない。
 だから、軽く溜息をついて補足した。
「誰だって、付き合ってる相手が、自分が知らねぇうちに会ってる相手のことは気になるだろ。その程度だ。その秘書とお前がどうこうなんて、全然思ってねぇよ」
「──なんで、何でもないって言い切れるんだよ?」
 静雄の回答が嬉しかったのか、或いは、面白くなかったのか、臨也はニヤニヤ笑いを消して冷めた目付きで問いを重ねてくる。
 本当に捻くれてるなと感心すらしながら、静雄は溜息混じりにそれにも答えた。
「お前らの雰囲気が全然似合ってねぇから。つーより、あの女はお前なんか相手にしないだろ。そんな馬鹿には見えなかったぜ」
「……それって、俺にものすごく失礼じゃない?」
「どこがだ。それに言ったろ、俺は馬鹿で趣味が悪いんだってな」
 言い切ってやると、また臨也は黙り込む。
 そして、白けたようにそっぽを向いた。
「あーあ。シズちゃんってそういうとこ、妙に普通で全然面白くないよ。キャラに似合ってないし、つまんないよね」
「あー、そうかよ」
 もうそれ以上は静雄も取り合わずに、改めて冷蔵庫の中を覗き込む。
 野菜室、冷凍室、チルド、冷蔵室と順番に開け、これなら、と思う。
「シチューかカレーか、肉か魚を焼いて、スープでもつけるか……」
「──クリームシチュー」
「ん?」
「シチュー食べたいって言ったの。その鶏肉、使っていいからさ」
「……分かった」
 どうでもいいと言いたげな詰まらなさそうな表情でリクエストしてくるのに、静雄は少し考えた後、うなずいた。
「お前も手伝えよ」
「……まあ、御飯食べていったらって言ったのは、俺だしね」
 いいよ、と臨也も了解して、野菜室を開け、玉葱や人参を取り出し始める。
 ごそごそと動くその小さな頭を眺め、静雄は小さく微笑んだ。




「お前も結構、料理できんだな」
「……シズちゃんさぁ、俺のこと何だと思ってるの? 悪いけど、俺、シズちゃんよりは生活能力あると思うよ?」
「風邪でぶっ倒れてたくせに」
「あれは特別。普段はそんなヘマしないよ」
「一度でもヘマはヘマだろ」
「体力馬鹿の君と一緒にしないでよ。俺は人間で、しかも繊細なの」
「どの面下げて繊細だなんて言いやがる」
「この面だって。とにかく、俺は家の中のことは全部できるんだよ。積極的にやるほど好きじゃないけどさ」
「……みたいだな」
 料理をする臨也の手つきは、確かに慣れたものだった。昨日今日に料理を始めた者の手際ではない。そういう意味では、静雄といい勝負だった。
「俺としてはむしろ、シズちゃんができる方が意外」
「ンなもん、ガキの頃から手伝ってりゃ普通にできるようになるだろ」
「────」
「何だよ」
「シズちゃん、家の手伝いとかしてたの?」
 心底不思議そうに聞かれて、静雄は少しだけ答えに迷った。
 だが、溜息をついて鍋をかき回しながら口を開く。
「……うちは母親もパートで働いてたからな。俺はこんなだし、せめて自分にやれることはやろうと思ったんだよ」
 静雄は、本人の性向とは少し別のところで、両親に迷惑をかけることしかできない子供だった。
 だが、そんな静雄に対し、両親は一緒に悲しんでくれはしても決して怒らなかったから、せめて、できる範囲で良い子でいようとしたのだ。
 学力的には大学進学も別段、難しくなかったのに、敢えて就職の道を選んだのも、一日でも早く自立したかったからだ。とにかく、親に迷惑をかけない存在になりたかった。
 それが成功しているかどうかは分からないが、今はもう親に損害賠償がゆくこともないし、盆暮れ正月に実家に顔を出せば、両親は手放しで温かく迎えてくれる。
 静雄の気分としては、少なくとも、昔よりは今の方が幸せであることには間違いなかった。
 そして、十代の頃の静雄の不幸の何分の一かの元凶であった男は、さすがに思うところがあるのか、ふぅんと他人事のように呟く。
「シズちゃんって結構、親孝行だったんだ」
「なんで過去形だよ。っつーか、孝行っつうほど何にもしてねぇよ」
「んー、でも俺の方は、親孝行云々以前に必要に駆られてだったからさ。まあ、親の海外勤務についていくのも嫌だ、家政婦を家に入れるのも嫌だって言った以上、自分でやるしかなかったんだよね」
「……そういや、高校時代にお前が一人暮らしだって聞いたことあったな」
「そうだよ。あの頃は妹たちも両親のとこに居て、静かだったんだけどねぇ。中学入学を期に帰ってきてからは、もう……」
「──九瑠璃と舞流が中学生、っつーと、お前はもう新宿に居たんじゃねえか? あいつらはどうしてたんだよ?」
「ああ、あいつらは素直に家政婦雇うのに賛成したから。俺も一応、時々は様子を見に行ってたし。まあ、最近はあいつらも更に余計な知恵をつけてきたから、極力、実家には寄り付かないようにしてんだけど」
「……実の兄妹でそれって、どうなんだよ」
「シズちゃんこそ、うちの妹たちを知ってて、よく言うよね。一遍、あいつらと暮らしてみれば分かるよ。あいつらと一つ屋根の下に居るのが、どんなに危険なことかさ。夜中に寝込みを襲われて、すっぽんぽんに剥かれて弄ばれても、俺は驚かないよ」
「──そんなことすんのか、あいつら?」
「しても驚かないってこと。とにかく俺の言葉は絶対に聞かないしね。触らぬ神に祟りなしってさ。近寄らないのが一番だよ」
「……お前も、妙なところで苦労してんだな」
「そーだよ。弟妹に関しては、正直、シズちゃんが羨ましいね。幽君が君を困らせることなんて、殆どないだろ?」
「あいつは出来過ぎだ。俺には勿体ねぇ弟だよ」
 昔から真面目で優しい弟の姿を思い浮かべ、静雄は溜息をつく。
 あれだけ賢い弟なのだから、こんな兄貴のことなどとっとと見限ってしまえば良いのに、未だに幽は、事ある毎に連絡を寄越し、気遣ってくれるのだ。
 本当に申し訳ないとも思うし、ありがたいとも思う。
 そんな風に久しぶりに弟に対する感慨に耽っていると、視線を感じた。
「何だよ?」
「別に? 俺は何も言ってないけど?」
 言ってなくても、と思う。目は口ほどにものを言うという格言もあるのだ。
「──何、シズちゃん」
「……いや」
「何もないってことはないんじゃないの? 嫌な感じだなぁ」
 陰険に絡んでくる臨也に、静雄は、気にするな、と自分に命ずる。
 どうせ臨也が素直に認めることなどないのだ。──ほんの一瞬とはいえ、平和島幽の存在が気に食わなくなりました、などとは。
 それを静雄が口にしたら最後、臨也の毒舌は救い難いレベルになる。図星を指されて黙り込むのは、本当に限られた場合だけなのだ。言い返せる隙があれば、この男はとことんまで可愛げのない生き物になれるのだと、静雄は知っている。
 だから、沈黙は金とばかりに臨也を無視して、食器棚から小皿を取り出し、完成の近付いたシチューを少量取り分けて、臨也に差し出した。
「──味見。手前が食いたいって言い出したんだぜ」
「…………」
 臨也とても、その話題で引っ張りたいわけではなかったのだろう。すっきりしない表情をしながらも、小皿を受け取って口をつける。
 そして、沈黙すること数秒。
「どうだ?」
「……すごーくムカついて不本意なんだけど、結構美味しい」
「そりゃ良かった」
 その枕詞は何だ、と思いながらも、静雄はうなずく。
 もともとホワイトシチューなどというものは、市販のルーなど使わなくとも、誰が作っても大きく失敗するものではないし、味も大きく変わるものではない。
 それなら、この辺で良いかと、コンロの火を止めた。
 そうして臨也を振り返ると。
 どこか微妙な感じのする無表情が、静雄を見つめていて。
「──何だ?」
 そう問いかけると、臨也はしばらく沈黙した後、溜息と共に言葉を吐き出した。
「何か、色々と面白くない。色んなこと全部。気に食わないとまでは言わないけどさ」
「……そうか」
 おそらく、今更ながらに一緒に料理をしているという現実に、何だか理不尽なものを感じ始めたのだろう。
 これまでの自分たちの関係や、臨也の性格を思えば理解できないことではなかったから、静雄も何となく納得してうなずいた。
 それから、右手を伸ばして臨也の肩を掴む。
 軽く引き寄せ、唇に触れるだけのバードキスを落として、小さく瞠られた瞳を覗き込んだ。
「慣れろ、全部。今すぐにとは言わねぇから」
 そう言うと、臨也の瞳が小さく揺れて。
 険がある、と呼ぶには、どこか切なさを含んだ目付きで静雄を睨んだ。
「シズちゃんの癖に生意気。その余裕ぶった態度、滅茶苦茶ムカつくんだけど」
「おう、好きなだけムカついてやがれ」
 別に静雄とて、余裕というわけではない。ただ、臨也がどんな反応を返そうと、気持ちはもう変わらないという確信のようなものはあった。
 鬱陶しいことを言ってこれば、ウザいとも面倒くさいとも思うが、それだけだ。時折、可愛らしい素振りを見せれば愛おしくなるものの、常にそれを求めようとも思わない。
 捻くれて天邪鬼でどうしようもない、時には悪意の塊のような折原臨也、そのままでいいのだ。
 だが当分、臨也はそれを認めようとはしないだろう。この先も散々に足掻き、無駄な抵抗を続けるに違いない。
 けれど、それで良かった。
「とりあえず、食おうぜ。腹減ってきた」
「──分かったよ」
 静雄が言うと、仕方ないとでもいうように臨也は溜息をつき、食器棚から皿を出し始めた。

*              *

 結局、臨也と会うのはあの日以来だから、十一日ぶりになる。
 それは偏(ひとえ)に、静雄の勤務先である会社が決算月に入り、取立ての仕事が急増したためだった。
 一応、月に四、五日の休みをもらえる職場ではあるのだが、毎年この月だけは殆ど休日が無くなる。月が変わり次第、代休として何日かの休みをまとめてもらえるのだが、それまでは会社のスケジュールに従い、黙々と働くしかない。
 静雄としては、自分のような人間を拾ってくれたトムにも社長にも心の底から感謝していたから、休みなしに働くこと自体は何の苦にもならなかったが、今年は一つだけ、臨也の事が気になった。
 一応、いつでも電話やメールをしてこいとは言ってあったが、素直に聞くような人間でもない。
 案の定、いつまで経っても連絡してこない臨也に痺れを切らして、こちらから電話してみれば、臨也の捻くれた物言いに久しぶりにムカついて、まともな会話にならなかった。
 だから静雄は、こいつと電話で話そうとした自分が間違っていたのだとその場で断じて、強引に今夜の食事の約束を取り付けたのである。
 命令形を臨也が嫌うのは分かっていたが、しかし、そうでもしなければ話を混ぜっ返され、ムカつくあまりに、会う約束をする前に静雄は電話を切ってしまう。
 その辺りの駆け引きは経験則的に分かっていたから、静雄は昼間、臨也の意見など殆ど聞かずに話を決めたのだが、現状を見た限りでは、それで正解だったと言えるだろう。
 少なくとも臨也の機嫌は悪くないし、店の選択にも不安を抱くほど懸命になってくれた。
 臨也としては言いたいこともあるのだろうが、静雄からしてみれば、もう十分だった。


「あ、ここだね」
 細い路地に並ぶ飲み屋の看板を見上げながら歩いていた臨也が、奥まった一軒の前で立ち止まり、店頭に掲げられていた品書きをちらりと見てから、のれんを掻き分けて入り口を潜る。
 続いて入ってみれば、中は、純日本風の古民家のような佇(たたず)まいだった。
 漆喰の白い壁と黒光りする柱や梁、床板を、裸電球のような色合いの照明がやわらかく照らし出している。
 そんな内装を静雄が眺めている間に、臨也は、予約の佐藤ですけど、と店員に名乗っていた。
「佐藤?」
「たかが飲み屋の予約に、本名を名乗るも必要ないだろ」
 案内の店員に聞こえないように低く問いかければ、臨也もまた声を低めて笑って返す。
 そのしたり顔の小賢(こざか)しさに、静雄は、まったくこいつは、と内心で溜息をついた。
 臨也の不器用過ぎる本心を知り、それを可愛いと思いはしても、だからといって、一から十まで全てを愛おしいと許したりするほど、静雄は単純ではない。
 否、本来の性格としては単細胞の傾向が強いのだが、それ以上に臨也とのこれまでの付き合いが、物事を単純化することを許さないのである。
 臨也が自分に向けている感情は信じているし、疑うつもりもないが、それ以外の部分の臨也の性情や倫理観については、静雄は恋人となった今でもこれっぽっちも信じていないし、評価もしていなかった。
 ただ、こうして会っている分には以前のようにはムカつかないし、大抵のことは溜息一つでやり過ごせてしまう。
 だから、臨也が今後、自分に対しては何をしようと構わない。但し、もし自分以外の人々に対して何かしようとするのなら、その時は体を張って止める。──臨也と付き合い始めてから静雄の中に生まれたのは、そんな覚悟であり、それ以外は何も無かった。
「シズちゃん、こういう雰囲気、嫌いじゃないんじゃない?」
「──そうだな」
 柱や梁と同じく煤けた色合いのどっしりとした一枚板のテーブル席に落ち着き、置いてあったメニューを開きながら尋ねてくる臨也に、静雄はうなずく。
 古民家風の内装ではあるが、BGMは80年代風のアメリカン・ハードロックで、ベースやドラムの重低音が効いた小気味いいビートがやや音量低めに流れている。最近よくある組み合わせであり、新味はないが悪くはない。
 少なくとも、職場の飲み会でよく連れてゆかれるスナックやキャバレーよりは、遥かに居心地が良かった。が、それを口にしたら、さすがに嫌味を言われそうな予感がしたため、余計な部分については言葉を省略する。
 それが功を奏したのか、臨也の表情に少しだけ嬉しげな色が加わった。
 そのまま嬉々として、臨也はメニューに書かれた酒の銘柄を吟味し始める。
「ここ、結構いい地酒が入ってるって話だからさ。せっかくだから飲もうよ」
「あー、その辺は任せる」
「そう? じゃあ純米吟醸でいい? 俺、混ぜ物してある酒、嫌いでさぁ。日本の酒は、米と麹と水だけで作るもんでしょ。それ以外のものが入ってるのは、ポン酒とは認めたくないんだよね」
「好きにしろよ」
「じゃあ、どれにしよっかなー」
 見るからに楽しげに臨也はメニューのページをめくり、ああでもない、こうでもないと呟きながら、程なくニつの銘柄を選び出した。
「じゃあ、これとこれを……まずは一合ずつにしておこうか。色々試したいし。あと、食べる方だね。俺、冷奴食べたい。この汲上げ豆腐のやつ」
「好きなもの頼めば良いだろ。出汁巻きと、刺身五種盛と……あ、シシャモがあるな。久しぶりに食いてえ」
「えー、シシャモ〜?」
「何だよ、嫌いなのか」
「シシャモは嫌いじゃないけど、死んだ魚の目は見たくない。なんかさぁ、ぞっとしない?」
「しねぇ。このコロッケも美味そうだな」
「うっわ、スルー?」
「当たり前だろ。手前に付き合ってたら、何も食わねぇうちに日付が変わっちまう」
「失礼だねえ。ホント、シズちゃんて、そういうとこ最悪」
「言ってろ。つーより、メニュー選べ」
「また命令形? 一体どんな亭主関白気取りなのさ。一度、新羅に脳ミソ解剖してもらったら? あ、俺、つくねと鳥皮、欲しい。鳥皮は塩で」
「おう。じゃあ、そろそろ店員呼ぶか」
「そうだね」
 何やかやと言い合いながら、メニューを選んで店員を呼ぶ。
 そして、次々に料理名を告げて。
「あ、シシャモはそちらで頭、取ってもらえませんか。こいつが死んだ魚の目が嫌だっつーんで」
「!? シズちゃん!!」
「何だよ、本当のことだろ。じゃ、とりあえずこれだけで」
 そんな風にどうにか注文を終え、少しの間、待ちの体勢に入る。
 ようやく落ち着いたその隙に、静雄は、お通しの小鉢を箸でつつこうとした臨也に声をかけた。
「臨也」
「ん?」
「とにかくな、最初にこれだけは言っとくぞ」
 そう前置きして、顔を上げた臨也とまっすぐに目線を合わせる。

「この先、お前が口先で何を言おうと、俺は絶対にお前を見限ったりはしねえから」

「お前はとにかく、俺相手には売り言葉に買い言葉でものを言うだろ。でも、それで構わねぇから。そりゃあ、今日の電話みたいに、たまにはムカつくこともあるけどな。でも、それを理由にお前を嫌いになったりはしねえ」
「────」
「それだけは覚えとけ」
 今夜会う時に、これだけは言っておかねばならない、と思っていたことだった。
 というのも、今日の昼間に電話していた時、途中で一度だけ、それまで立て板に水の勢いで喋っていた臨也が、不安げに静雄の名前を呼びかけたことがあったのだ。
 その時は静雄も少し冷静さを欠いていたため、スルーしてしまったのだが、電話を切ってから会話を思い返して気付いた。
 とはいえ、その直後に食事に誘ったのだから、静雄が怒っていないことは臨也も分かっただろう。
 それでも、どうしても気になって、そんな言葉遊び程度のことでは嫌いになどならないと、捻くれ者で毒舌家の恋人に伝えてやらなければならないと思ったのである。
 だが、余りにも唐突過ぎたのか、それとも予想外の言葉過ぎたのか、言われた側の臨也は、呆然と穴が開くほどに静雄を見つめて。
「……シズちゃんて、本当にどうかしてるんじゃないの」
 やっとそれだけを口にした。
 そして、まなざしを伏せ、小鉢をつつき始める。
 その顔が、いつになく物思いに沈んでいるように見えたが、静雄はそれ以上は何も言わなかった。
 この手の話をグダグダと引き摺って良いことは滅多にない。静雄としては、言いたいことを伝えたのだから、後は臨也がどう受け取るかである。
 臨也が考える時間が欲しいというのなら、そっとしておいてやるつもりだったし、それ以上の言葉や態度を求めてくるのなら、その時はその時で応えてやるだけだった。
 そして、沈黙の内に小鉢の中身がほぼ無くなった頃、酒が運ばれてくる。
 店員がテーブル横にやって来た時には、既に臨也はいつもの表情を取り戻しており、互いの猪口に酒を注いで、一体何に乾杯するのかと二人で首をひねった挙句、まあいいか、とそのまま酒を干した。
「あ、結構いけるね」
「そうだな、美味い」
 東北だかどこだかの地酒という話だったが、確かに香りが良く、味もふくよかに広がる。
 これならいい、と満足して向かい側を見れば、臨也は早速、手酌で二杯目を注いでいる。
 一緒に飲んでいるのに手酌かよ、と内心で呆れたが、それはそれで臨也らしいと微笑んで、俺にも寄越せ、と酒を注ぎ終えたその手から銚子を取り上げた。

*             *

 前回に一緒に夕食をとった時点で分かっていたことだが、杯を重ねながら、運ばれてくる料理をつつきつつ言葉を交わしている分には、臨也は楽しい話し相手だった。
 言葉の一つ一つに、独特のものの見方と彼らしい身勝手さが混じっていて、時折呆れつつも、静雄は仕事中に小耳挟んだおかしなネタや、街で見かけた他愛の無い話を幾つもし、また同じように臨也の話を聞いた。
 交わした会話の中に意味のある話は、多分、一つもなかっただろう。だが、それで良かった。
 むしろそれが、互いに求めていたものだった。
 いがみ合うことなく、好きな相手と馬鹿みたいな話をひたすらにする。世間では当たり前のようなそれだけのことが、これまでの静雄と臨也にとっては、絶望的に遠かったのだ。
 だが、その遠く、他人事として眺めているしかなかった時間が、今、ここにある。
 二人のことを知る人間が見たら、一体何をしているのかと驚き呆れるだろう。あるいは、似合わなさに失笑するかもしれない。しかし二人は、初めて味わうこの時間に夢中になっていた。
 その証拠に、何本目かの銚子が空になり、さて次はどうしようかと思いつつ携帯電話の時刻を確認した時には、もう十一時を回っていたのであって。
「あれ、もうこんな時間?」
「……結構、時間経ってたな」
 いつの間に、とそれぞれの携帯電話を見つめ、臨也は溜息未満の吐息と共に、手にしていたメニューをテーブルに置く。
「まだちょっと早いといえば早いけど……」
「そうだな」
 静雄も溜息をついて、テーブルの上に置いていた煙草とライターをポケットに戻した。
「会計は割りカンな」
「あ、うん」
 そして店員を呼び、勘定を済ませる。結構飲み食いしたつもりだったが、結果から言えば、飲食よりも会話に口を使っていたのだろう。頭割りしても一人一万円に満たなかった。
「思ったより安上がりだったなぁ」
「でも、酒も飯も美味かったぜ」
「そう」
 口に合ったんなら良かった、といつになく素直な口調で臨也が言う。
 傍目には酔いを感じさせるものは微塵も無かったが、もしかしたら、少し酔っているのかもしれない。或いは、酒のせいにしてしまいたいのかもしれない。そんな風に静雄は思った。
「あ、シズちゃん。この道、こっちにも抜けられると思うから」
 店の外に出て、路地を来た方向に戻ろうとすると、臨也が反対側へ行こうと誘う。
 新宿は臨也の街であり、静雄は駅周辺しか土地勘を持たない。だから、素直にそちらに従って歩き出した。
 飲み屋の連なる狭い路地を抜けると、来た時に通った通りよりも細い裏通りに出る。当然のことながら人通りも少なく、夜の新宿だというのにニ、三の人影しかない。
 だが、二人で歩く分には、確かにこの方が都合が良いと言えば良かった。
 そして、ブロックの途中まで来たところで、それまで黙っていた臨也が不意に口を開いた。
「──あのさぁ、シズちゃん」
 臨也の良く透る声が、遠く喧騒の聞こえる裏通りにしんと響く。
 その響きを、静雄は黙ってただ聞いた。
「君が先に言ってくれたから、俺も言うんだけどさ」
 静かな……臨也としては静か過ぎる声に、静雄は無意識に足を止める。すると、臨也もニ、三歩 、前に行ってから立ち止まった。
 そして、振り返り、コートのポケットに両手を突っ込んだまま、静雄を見つめる。
「多分、言うまでも無いことなんだろうけど……。俺はさ、素直になるとか……絶対、無理だから」
 そう告げて。
 臨也はまなざしを伏せ、足元のアスファルトを軽く爪先で蹴る。

「そういうスキル、俺には無いんだよ。素直とか、正直とか。今さ、こうやって話をしてるのも、俺としては結構、限界なんだ。──はっきり言って、今すぐシズちゃんにナイフで切り付けて、逃げ去りたい。……その意味、分かる?」

 再びまなざしを上げて静雄を見た臨也の表情は、微笑になりきらない微笑に彩られており、それが返って苦しげにも辛そうにも見えた。
 そんな臨也を真っ直ぐに見つめて。
「分かるに決まってんだろうが」
 静雄は、口調は静かながらも強い声で告げる。

「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ、臨也。俺がいつ、手前に素直になれなんて言った?」

「言ってねぇだろ? 手前はそのまんまでいいんだよ。捻くれて、捻じ曲がって、時と場合に拠っちゃ丸っきり悪意の塊としか思えねえ。それが、お前だろ」
 かすかに苛立ちのこもった静雄の声を、臨也はただ聞く。両手をポケットに突っ込んだまま、その場に立ち尽くして。
「無理なんかすんなよ。言いたいことは言えばいいし、ナイフで切り付けたいんなら、そうすりゃいい。手前如きにどうこうされる俺じゃねえし、今更、そんなことくらいでお前に愛想を尽かしたり、嫌ったりなんかしねえよ」
 苦しいのを我慢して、素直になる必要などない。
 逃げ出したいのを、無理矢理にここに留まる必要などない。
 無論、精神的にはギリギリでも、逃げずにこの場に踏みとどまる臨也の気持ちが愛おしくないといえば嘘になる。
 だが、それは静雄が本当に欲しいものではなかった。
「臨也」
 名前を呼ぶと、それきり沈黙が落ち。
 じっと静雄を見つめていた臨也が、小さくまばたきして口を開く。

「シズちゃんさぁ、本当に馬鹿なんじゃないの」

 心底呆れたように告げてくる声が、かすかに震えているのを静雄は聞き逃さなかった。
 三歩の距離を足早に詰め、そっと臨也の頬に手のひらを触れる。
 すると、臨也はうっすらと濡れた目元を見られるのを嫌がるかのように目を伏せ、それを追って、静雄はそっと唇を重ねた。
 触れるだけのついばむようなキスをしてから、ゆっくりと深く重ねる。そして、薄く開かれた唇の間から舌を滑り込ませた。
 やわらかく口腔内をなぞってやると、臨也の舌も切ないほどに静雄を求めて、滑らかに優しく動く。そのやわらかさと甘さに静雄は溺れ、これで十分だと心の底から思った。
 言葉にできなくとも、臨也が精一杯に静雄を想っていることは、何気ない日常の仕草の中から十分過ぎるほどに伝わってくる。このキスにも、嘘などどこにもない。
 込み上げる愛おしさのままに細い体を抱き締めると、臨也の手が静雄のシャツをぎゅっと握るのが感じられて。
 更にたまらなくなった。
「俺は、お前が俺を嫌ってないんなら、もうそれだけでいい」
 ゆっくりと唇を離し、心の底からそう告げると。
 臨也は何も言わずに目を伏せ、静雄の背に両腕を回す。
 だから、静雄ももう何も言わず、黙って臨也を抱き締めた。

*             *

 最終電車より二本早かったが、これ以上ぐずぐずしていても切なくなるばかりだと分かっていたから、新宿駅の西口で静雄は臨也を見つめた。
「じゃあな、また連絡する。今月中は休みは取れねえけど、また飯くらい食おうぜ」
「そうだね」
 先程の裏通りでの面影など微塵も無く、臨也はいつもの顔でうなずく。
 そして、片手を挙げて去りかけた静雄に、何かに気付いたように臨也が、あ、と声を上げた。
「そういえばさ、シズちゃん。俺、仕事でニ、三日中に池袋に行くんだけど、」

「来んな」

「──は?」
「来んなっつってんだ。手前が池袋に来ると、ロクなことがねえ」
 振り返り、容赦なく断言してやると、唖然としていた臨也の眦(まなじり)が見る見るうちに吊り上がる。
「──それってさあ、さっきの今で言う言葉? 何かおかしくない?」
「おかしかねぇよ。お前が俺に何か言ったりしたりするのは構わねえけど、お前が池袋で何かしやがるのを見逃してやる気はねえ。言っとくけど、その辺については俺は、お前のことは全然、全く、これっぽっちも、信用してねぇからな」
「はあ? 何それ。最低にも程があるんじゃない?」
「最低は手前だろ。池袋の街に騒動起こすのが趣味の癖しやがって」
「そんなの俺の趣味じゃないよ。俺の趣味は、人間観察。もっと高尚で知的なものだよ。第一、池袋で日常的に喧嘩沙汰起こしてるシズちゃんになんか言われたくないね!」
「その人間観察のために手前は毎度、えげつねぇ騒動を引き起こしてるんだろうが。とにかく池袋には来るんじゃねえ。見かけたら、潰しゃしねえが即、新宿に返品してやるからな」
「うっわ、本当に最悪。でもさ、シズちゃん。俺が大人しく君に捕まると思ったら大間違いだから。吠え面かくのは君の方だってこと、覚えといた方がいいよ」
「はん、やれるもんならやってみな」
「それはこっちの台詞だよ。じゃあね、シズちゃん。もう当分会わないから、電話とかしてこないでよね!」
 思い切りいけ好かない、小憎らしい調子でそう言い捨てて。
 臨也は身を翻し、あっという間に駆け去ってゆく。
 その後姿に溜息をついて、静雄もまた、改札口に向かった。
 ホームに上がり、程なく到着した列車に乗り込む。そして、ぼんやりと窓の外の夜景を眺めているうちに池袋に着いて。
 また改札口を抜けて、さすがに人通りの少ない構内をサンシャイン口に向かって歩いている途中、不意にポケットの中で携帯電話が鳴った。
 メール着信を知らせる電子音に、取り出して見れば。
「……俺には電話すんなっつっといて、手前からのメールはいいってか?」
 画面に浮かび上がった『折原臨也』の名前に舌打ちしながら、メールを開く。
 そこには一言。

『シズちゃんのバーカ。』

「ああ!?」
 条件反射的に、こめかみに青筋が浮く。が、寸でのところで携帯電話を握り潰しかけた手のひらの動きを抑え、あいつはこういう奴だ、と静雄は呪文のように心の中で唱えた。
 恐ろしく入り組んだ悪辣な罠とは別口に、まるで子供のような嫌がらせや悪戯を仕掛けてくるのは、昔からのことだ。
 こういうことはこれまでにも散々あっただろうと自分に言い聞かせ、そして少し落ち着いたところで、メール画面を綴じようとして、画面の右端にスクロールバーが出ていることに気付いた。
「──続きがあんのか……?」
 冒頭の一行の下には空白しかない。だが、スクロールバーがある以上は何かがあるのだろうと、方向ボタンを何度か押す。
 そして随分と画面をスクロールした、その一番下に。

『ありがと。』

 それは、あの意地っ張りの捻くれ者の精一杯の言葉。
 静雄は目を瞠ってそれを見つめ、噴き出すように相好を崩した。
 そして、少し考えてから返信を打つ。

『泣いてんじゃねーよ。バーカ。』

 すると、返信はわずか三十秒後だった。

『誰が泣くんだよ! 本ッ当に最低!! 死ね!!』

 携帯電話の向こうで、顔を真っ赤にして涙目で怒り狂っている臨也が見えるようなその短いメールを見て、今度こそ静雄は声を上げて笑う。
 そして、胸に溢れる愛おしさを感じながら携帯電話をポケットにしまい、アパートに帰るべく夜の池袋の街を歩き出した。

End.

というわけで、初デート編完結。
次作で、ひとまずのシリーズ完結です。
※オマケを追加しました。

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