恋愛遊戯 03
湯を使うかと聞かれて、うなずいた鬼灯は、建物の裏手にある露天風呂で汗と汚れをざっと流し、室内に戻ってきた。
白澤と知り合ってからは随分と長く経つが、寝室に入るのは初めてのことだった。扉を開けて一歩踏み込んだ所で、正面に置かれた寝台が目に入り、思わず足が止まる。
まるで生娘のような反応だと自分でも思ったが、これから何をするのかを考えると、自然に体がこわばるのをどうすることもできない。
そのためらいを見透かしたのだろう。
「やっぱり止める？」
寝台の縁に腰を下ろして待っていた白澤は、咎めるでもなく問いかけてきた。だが、鬼灯は、いいえ、と否定して気を取り直し、彼へと歩み寄った。
正面に立つと白澤が手を差し出してくる。上に向けられた左の手のひらに、ためらいつつも鬼灯が手を重ねると、ゆるりと引き寄せられた。
そして、白澤は空いていた右手を上げ、鬼灯の後頭部へと指先を触れる。何を、と思うまもなく、髪を纏めていた帛(はく)が解かれた。
そのまま長い指で梳かれ、黒髪がさらりと肩から零れ落ちる。
「すごいね、結っていても殆ど癖もつかないんだ。こんなにしなやかで手触りがいいのに」
感心したように白澤は言い、一房を掬い取って、そっと唇に寄せる。
「ずっとね、この髪に触ってみたかった。髪を下ろしてるお前を五年前のあの夜、初めて見たけど、本当に綺麗だったから」
そう告白されても、どう返せばよいのか鬼灯には分からない。当惑しつつも好きなようにさせていると、やがて白澤は微笑み、おいで、と彼の横に座るよう促された。
僅かに間を空けて腰を下ろせば、同じ目の高さで白澤が覗き込んでくる。
「後悔しない？、っていうのは愚問か」
自嘲するように白澤は小さく笑み、まなざしを伏せた。
「こんなこと、しない方がいいって分かってる。お前だって、どうしてこうなったんだって後悔しながら考えてるんじゃないのか？」
「私は、別に……」
「うん」
白澤はうなずく。その顔は、鬼灯の嘘など分かっている顔だった。
「それでもね、お前が仮初でも僕のものになってくれるのなら、僕はもうどうなってもいいと思ってる。だから、僕を蹴り倒して逃げるのなら、今だよ？」
淡い笑みと共に白澤は、またもや鬼灯の前に逃げ道を提示する。そんな彼の目を見つめ、鬼灯は言った。
「逃げる必要がどこにあるんです」
声はしっかりと出た。震えもかすれもしない。
「私だって、貴方のものになってもいいと……なりたいと思ったから今、ここにいるんです」
「……ありがとう」
まるで信じていない顔で、それでも白澤は嬉しそうに微笑む。
そして、もう一度手を上げて鬼灯の髪をそっと梳き撫で、あらわになった額の角の付け根にそっと唇を押し当てた。
「男は初めてだろ？ 苦しい思いはさせてしまうと思うけど、痛い思いは絶対にさせないから」
「……別にいいですよ。痛かろうが苦しかろうが」
その方が多分、繋がった実感は得られる。
もともと、甘く優しい交わりを期待しているわけではない。心が通い合わないのに、そんなものを求めるだけ虚しいことくらい分かっている。
だから、どんなにひどくされても良かった。閻魔庁に自力で帰ることさえできれば、どんな痛みでも感受できる。そう思い、告げたが、白澤は苦笑しただけだった。
「こんな時も、お前は変わらないな」
その笑いは久しぶりに翳りが薄く、鬼灯は思わず響きを必死に耳で追う。
かつてはいつも、この響きを聞いていた。へらへらと笑い、甘く涼やかな声で女を口説き、こちらと顔を合わせれば罵詈雑言を返してきた。
その声のどこにも翳りなどなかった。いつでも屈託なく伸びやかで、天の獣にふさわしく明るさに満ちていた。
そう、その声が好きだったのだと、今更ながらに鬼灯は気付く。
もしかしたら、もう二度とは聞けないかもしれない、あの声が。
「白澤さん」
かすれかける声を必死に抑え込みながら、鬼灯は言葉を紡ぐ。
「私は貴方の言葉をどう信じたらいいのか分かりません。でも、本気で言ってくれているのなら、信じてみたいとは思ってるんです。その上で、貴方のものになると言ってるんです」
懸命に本心を言葉に変え、告げる。だが、まばたきした白澤は、ふっと先程から変わらぬ淡い笑みを浮かべただけだった。
「その言葉だけで僕は十分だよ」
「白澤さん――」
通じない、と鬼灯は目の前が暗くなるのを感じる。
どれほど言葉を尽くしても、やはり通じない。もしかしたら目の前の鬼が想っているのは自分ではないのかとは、僅かにも疑ってはくれない。
比べて鬼灯は、一見真摯な彼の言動に、こうも心を揺らされている。信じられる証があれば信じたいと、切実に思い始めている。
彼が自分の言葉を信じてくれたら、そして真実、自分に向けて笑ってくれたらと。
そう願い始めている。
ああ、と鬼灯は予感した。
こうして触れ合うことを決めたものの、決して自分たちは長くは続かない。
信じるふりをするのは同じであっても、こうも心持ちが遠く隔たっていては、その嘘すらきっと上手く噛み合わない。
一月か、三月か、一年か。
頻繁に会うことがかなわない分、多少は持つかもしれない。だが、破綻するのは既に時間の問題だった。
もしくは、その前に彼が関心を失ってしまうか。
鬼灯が知る限り、白澤が誰か一人に執着したことはない。馴染みの娼妓は衆合地獄に複数いるようだが、そのうちの誰かが引退したり恋人ができたりすれば、笑って本気で祝福する男である。
そんな天の獣の執着が一体どんなものであるのかは、人の子であり地の底の鬼である鬼灯には測ることすらできない。
彼は決して残酷なことをする性分の持ち主ではないが、手に入れて自分のものとした後、いつまでそれを愛でていられるか。
どこを見ても一筋の希望すらないことに、今更ながらに鬼灯は身の内が慄くのを感じる。
けれど、それでも。
「白澤さん」
貴方が好きですと言うのは止めた。言えば言うほど、その告白は彼を傷つける刃となる。
だから、鬼灯は敢えて一歩前に踏み出す言葉を選んだ。
「どうすればいいのか教えて下さい。貴方のものになるために、私はどうしたらいいですか」
「……うん」
その言葉くらいは受け止められるのだろうか。白澤は切なさの中にも感謝に似た色を浮かべ、鬼灯の頬をそっと撫でる。
「僕を拒絶しないで。お前はそれだけでいい」
「それだけでいいんですか」
「今はね。それで十分だ」
そして、ふっと悪戯に笑んだ。
「もし関係が続いて、お前の方から僕に何かしたいと思ってくれたら、それは心から歓迎するけどね」
その笑みは本来の彼の笑顔に僅かに似ていて、鬼灯は目を奪われる。
だが、続く言葉はやはり、鬼灯の心を容赦なく抉った。
「けど、今だけでもいいんだ。今だけでいいから……僕を愛しているふりをして欲しい」
「……ふりなんかしなくったって、」
かすれそうになる声をどうにか平静に押し出す。
「私は貴方を愛してます」
「――ありがとう」
やわらかに笑って、白澤は鬼灯を大切な宝物を抱くかのように抱き締める。
温かな胸と腕に閉じ込められ、鬼灯は静かに目を閉じる。
それは残酷で儚い、夢物語の始まりだった。
＊ ＊
「――っ…」
十分に時間をかけ、奥深い所まで蕩かしてやったはずだが、それでもこれまでに経験のない感覚は辛いのだろう。
白澤がゆっくりと鬼灯の内に熱を沈めると、小さく苦しげな呻きと共に、白澤の二の腕を掴む手にぐっと力がこもる。
人の子ならば肉を引き千切られかねない指の力も、白澤にしてみれば愛おしいばかりだった。
矜持の高い、美しくも凶悪な鬼が今、自分の前にすべてをさらけ出し、必死にこの身に縋り付いている。まるで夢の中の出来事のようだった。
「は、くたく、さん……っ」
名を呼ばれ、ああ、間違えはしないのだと白澤は思う。
きつく目を閉じて抱かれてはいても、この鬼は他の誰かと名を呼び間違えたりはしない。閉ざした瞼の裏に浮かんでいるのが誰であるのかは知れないが、少なくとも今抱いているのは白澤だということは分かっていてくれる。
好きだよ、とささやき、汗に濡れた前髪をかきやって額に口接けを落とせば、鬼灯はうっすらと目を開けた。
懸命に焦点を合わせようとする闇色の瞳は、苦痛と悦楽の間をゆらゆらと彷徨っているのが見える。案外に馴染むのが早い、と白澤は思った。
先程、寝室の入り口で身をすくませた様子から、おそらく男に抱かれた経験はないのだろうと踏んだが、それは間違いではなかった。
童貞でもなかろうに、白澤が触れてやる度に戸惑い、強い羞恥を押し隠しながら受け入れる様は、まるで従順な生娘のようでひどく欲をそそられた。
それでも乱暴なことをできなかったのは、そうまでして受け入れてくれる鬼灯が愛おしかったからだ。
他に誰か想う相手がいることは知っている。身代わりか、あるいは思い煩いを忘れるための道具にされているのであっても、愛してますと囁き、こうして未通の身体を差し出してくれる鬼灯が愛しかった。
「辛いだろ、ごめんな」
今もいたわる声をかければ、細く喘ぐような吐息を零しつつ、小さく首を横に振る。
「平気、です」
「そう？ でも辛ければ辛いと言えよ？」
「そんな、こと……私が言うと、思ってるんですか」
見るからに苦しげなのに、強気で睨み上げてくる。その様がひどく可愛らしく感じられて、白澤は笑った。
「いいや、思わないよ」
そして、上気し、うっすらと汗ばんだ頬を優しく撫でる。
「そういうお前の強情で意地っ張りなとこ、嫌いじゃないよ。……本当に嫌いなとこなんて、一つもないんだけどな」
嘘だった。
この鬼をどうしようもないほど嫌いで憎いと感じる部分が、一つだけある。
―――だって、お前は僕を愛してくれない。
こうして身体を開き、愛していると言いながらも、心はよそを向いている。残酷なその部分だけは、たとえようもなく憎らしい。けれど、そんな部分さえ愛おしい。
相反する想いに引き裂かれ、押し潰され続けた心はとうに悲鳴を上げている。
だから、胸の痛みを無視して、白澤は狂おしいほどに熱い鬼灯の柔襞の感触に溺れる。
男を受け入れたことの無いそこは、無理やりに白澤の熱を抱き留めさせられて、余裕なく引き攣るように喘いでいる。慄き、異物を押し出そうとする拒絶の反応すら、白澤にしてみれば目のくらむような快感だった。
しばらく動かずに待っていれば、きつさは変わらないものの、鬼灯の表情に滲む苦痛の色が少しだけ薄らぐ。
「少し楽になってきた？」
そう問いかけてやれば、鬼灯は反応に困ったような様子で、軽く白澤を睨んできた。
それが可愛くて、また白澤は笑う。
「お前だって知ってるだろ。動物の身体は媾合に馴染むようにできてる。おかしいことじゃないよ」
だからといって、いちいち言われたくは無いのだろう。鬼灯は白澤の二の腕に添えたままだった手に、ぎっと力を込めてきた。
「こら、痛いって」
鬼灯は爪を短く摘んでいるから、きつく指を立てられても痛いばかりで血を見ることは無い。
笑いながら白澤は鬼灯の髪を撫で、口接けを頬に落とす。そして唇を重ねれば、鬼灯は自ら唇を開き、まだどこか躊躇いつつも熱っぽく応えた。
「それじゃ、そろそろ動くよ」
「……はい」
告げれば、躊躇いを見せつつも小さくうなずく。いつもの不遜な態度が嘘のような健気（けなげ）さで、こんな一面もあったのだなと白澤は思う。
そして同時に、想う相手に気持ちを告げない鬼灯も、その相手をも愚かだと思った。
冷徹の下に隠されたこんな健気さ一途さを隠すことなく明かせば、どんな女でも男でもよろめくだろう。そうしない鬼灯は馬鹿だし、そんな鬼灯に気付いて応えてやらない相手は、もっと馬鹿だった。
―――お前はこんなにも可愛いのに。
僅かな苦痛すらも生じさせないよう、そろりと白澤が腰を動かすと、鬼灯はびくりと身体を震わせて目を閉じる。
強い違和感を感じながらも、必死に感覚を受け止め、快楽の糸口を掴もうとしている様は、ただただいじらしい。
無理をさせまいと、白澤は手を鬼灯の中心に伸ばし、半ばまで熱の通ったそれにそっと指先を這わせた。
「っ、く……っ」
殺し切れなかった小さな喘ぎが、鬼灯の薄く開いた唇から零れ落ちる。
直接的な愛撫は、こんな状況でもきちんと捉えることができるのだろう。ゆるゆると撫でてやりながら、慎重に腰を動かすうち、きつく閉じようとしていた柔襞がほんの僅かずつ、やわらいでくる。
白澤は急がなかった。無茶をして苦痛を味わせるつもりなど毛頭ない。ただ大切に、ゆっくりと鬼灯を未知の感覚に導き、慣らしてやってゆく。
少しずつ少しずつ、鬼灯の中が白澤の動きに馴染んでくる。こわばりがほぐれ、拒絶するばかりだった柔襞がおそるおそる白澤の熱に寄り添い始める。
「……っ、ふ、あ……」
もう大丈夫だ、と白澤は思った。切れ切れに零れる鬼灯の声にも僅かずつではあるが甘さが滲み始めている。
まだ深い部分を突かれるのは痛いだけだろうから、敢えて浅い部分で自分を遊ばせ、無理のない範囲で動きを深めてゆく。
こわばりが解ければ、その分、敏感な箇所を愛してやりやすくなる。感じやすいところを優しく責めてやれば、ひくひくと鬼灯の腰が震えた。
「――っ、ん、んっ」
「我慢しなくていい。気持ち良くなっていいよ」
どうにかして快感を感じ取ろうとしていたのに、いざ、快楽が迫ってくるとどう受け止めればいいのか分からず、身が竦むのだろう。きつく眉根を寄せ、唇を噛む鬼灯の顔をそっと撫でてやると、鬼灯はゆっくりと目を開いた。
上気して淡く染まった顔の中、とろりと蕩けかけた闇色の瞳が戸惑いを浮かべて白澤を見上げる。
白澤が微笑み、そっと顔を傾けつつ寄せれば鬼灯は目を閉じて口接けを受け止めた。ゆったりと舌を絡ませ合いながら、手のひらと手のひらをも重ね、指を絡め合う。
まるで相愛の恋人同士のようだと白澤は思った。恋い恋われ、やっと結ばれることができたような。とてもとても幸せな。
名残を惜しみつつ唇を離せば、再び鬼灯がどこか切ない色を載せた目で白澤を見上げる。
「白澤さん……」
「うん。……好きだよ」
真心からの言葉を告げれば、鬼灯の瞳がどこか悲しげに、切なげに揺れる。
その目を白澤は知っていた。
愛の言葉を囁いたのが他の誰かであれば、と希（こいねが）う色だ。長い長い放蕩生活の中で、何度も何度もその色を娼妓達の目の中に見た。
本気で誰かに恋をして、けれど儘ならぬまま他の客に抱かれ、愛の言葉を聞きたがりながら、いざ睦言を囁かれれば切ながる。そんな愛しくて哀れな女達と今の鬼灯は同じ目をしていた。
そして、彼女たちと同じ、偽りの睦言をそっと囁く。
「私も好きです」
白澤の愛しているふりをしてくれという提案は、鬼灯にとっておそらく都合の良いものだったのだろう。白澤を誰かにすり替えて愛を囁くことができるのだから。
そんな鬼灯がどうしようもなく愛おしくて――憎い。
「うん」
白澤は微笑んでうなずきながら、再びゆるりと腰を動かした。
「っふ、ぁ、ん――っ」
「そのまま感じていて。大丈夫、怖いことじゃないから」
初めての経験に男も女もないのだろう。未知の快楽を知り、怯える処女そのものの反応を見せる鬼灯に優しく声をかけつつ、白澤は敏感に震える身体の感じやすい所ばかりを丁寧に撫で、口接けを落とす。
そして、今は固く張りつめておののいている鬼灯の熱に、するりと手指を絡めた。
「――っ、あ、や……っ！」
「大丈夫。もっと気持ち良くなるだけだから」
あまり長引かせても今は戸惑いが増すだけだろう。時間があれば一晩中でも愛し続けて、徹底的に快楽に慣らしてやることもできるが、今はそうはいかない。
とりあえず気持ち良さだけを記憶に刻みこんでやるべく、白澤は丁寧に鬼灯を愛した。
「っ、ん、ふっ、あ、ああっ」
肉体の中で最も敏感な部分を体の外側と内側の両方から責め立てられてはたまらないのだろう。鬼灯の口から確かな嬌声がとめどもなく零れ始める。
速度も強さも変えず一定を保って愛してやっているうちに、ゆっくりと鬼灯の快感が膨れ上がってゆくのが感じられた。
呼吸が忙しなくなり、辛そうに眉根を寄せた顔は一層艶めいて、全身がひくひくと震え始める。
白澤の熱を抱き留めている柔襞は更にやわらかく蕩け、食むような動きを慣れないながらも見せつつ絡み付いてくる。
そしてそれらの反応が一層強くなり――。
「っあ、あ、あああ……っ！」
一際高い声を上げて、鬼灯は絶頂に達する。その瞬間を逃さず、白澤も鬼灯の内に可能な限り深く己を沈め、そのきつい締め付けを存分に味わった。
ここまでの愛戯は白澤にとってはやや物足りないものだったが、それでも処女のきつい締め付けを受ければ十分に達することができる。
ましてや相手は鬼灯だ。ためらうことなく白澤はすべてを愛しい鬼の内に迸らせた。
他に想う相手がいる相手にそうすることに憐れみを覚えなかった訳ではない。だが、今ばかりは己の欲望が勝った。
鬼灯の心がどちらに向いていようと、この身体を初めて抱いたのは自分であり、初めて精気を受け止めさせたのも自分である。その事実だけは決して消せない。
「―――…」
名を呼びたい、と思った。けれど、これまでまともに名前を呼んだこともない大嫌いな相手に呼ばれても、嫌悪感を生じるだけだろう。
だから、白澤は黙って、ぐったりと寝台に身を沈める鬼灯を抱き締める。
間違いなく愛し合ったはずなのに、ひどく悲しい。けれど、しなければ良かったとも思えない。
五年前に彷徨いこんだ恋情地獄の更に深い闇へと足を踏み出してしまったことを感じて、白澤は涙も零せないままひそやかに哭いた。
＊ ＊
to be contined...
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